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映画の紹介とかいろいろ(ネタバレあり)

黒澤映画の頂点とも言うべき完成度の高さ『赤ひげ』

   

山本周五郎の長編小説を黒澤明が映画化
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黒澤映画の頂点とも言うべき完成度の高さである。

黒澤映画は音が悪いと言われ続けていた。
この映画では磁気録音を採用。
澄んだ音響で江戸の音を見事再現。

渡会伸録音監督は、
この映画で日本映画初のワイヤレスマイクを使い、
特に子役のシーンではその威力を見事発揮している。

 

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数々のエピソードで構成され群像劇である。

江戸の小石川療養所を舞台に神のような赤ひげ先生(三船敏郎)と青二才保本登(加山雄三)が赤ひげに感化されて立派な医師となる様を三時間の尺で描く。

その中でも感動的なのが、佐八(山崎努)とおなか(桑野みゆき)の悲恋のエピソード
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病床で余命いくばくもない佐八が、貧乏長屋の人々を集めて恋女房の思い出を語る。

初めて出会った雪の日のシ-ン。
映画史上最高の雪が降る。
人工的に降るその雪は見事で、映画黄金時代のスタッフの職人気質を感じさせる。

黒澤映画の雨や風や雪は全て人工的に作り出したもの。
そしていつもそれはダイナミックに詩的に表現される。

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夕陽に照らされた田園の中での二人の逢瀬。白黒映像なのに色彩を感じさせる重厚な映像。

大地震の迫力ある映像。
もくもくと黒煙立ち上る瓦礫の中でおなかは「ケリをつける」決心をする。
望遠レンズは黒煙越しの巨大な太陽を映す。

これは映画が芸術である事を完璧に立証した、見事な完成度である。

そしてこのエピソードの悲しさと美しさはどうだろう。

人を愛する美しさと痛み。
そして人生とは貧しかろうが、裕福であろうがいつか死が訪れる事を真摯に描く映画でもあった。

ここに劇中赤ひげ先生が保本に語る台詞を引用したいと思う。

「これまで、政治が貧困と無知に対して何かした事があるか?貧困と無知をそのままにしておいてはならぬと言う法令を一度でも出した事があるか?貧困と無知。それさえ何とかなれば病気の大半は起こらずに済むのだ」

この映画のテーマである。

 - 邦画